世界中が注目する北中米W杯準決勝、アルゼンチン代表対イングランド代表。
因縁の歴史を、当時のユニフォームとともに紐解きます。

のちに約12億円という史上最高額クラスのヴィンテージアイテムを生み出したこの対戦カード。7月15日(水)、アトランタのメルセデス・ベンツ・スタジアムでW杯本大会通算6度目の直接対決が実現します。

さかのぼること1966年のイングランドW杯、退場事件を発端とした因縁のライバル関係。残念ながら当時はレプリカシャツが一般販売される文化がなく、コレクターズアイテムとしてはほぼ存在しないため今回は割愛しますが——その後3度にわたるW杯での対戦はいずれも歴史に残るドラマを生み出してきました。

面白いことに1986年・1998年・2002年の過去3大会はすべて「アルゼンチン代表がホーム扱い、イングランド代表がアウェイ扱い」でした。
2026年北中米W杯では初めてイングランド代表がホーム扱いとなります。
それぞれの試合で実際にピッチに立った両チームのユニフォームの組み合わせとともに、激闘の歴史を振り返ります。

1986年 メキシコW杯 準々決勝:「急造アウェイモデル」と「神の子」——伝説が生まれた90分

試合結果:アルゼンチン代表 2 – 1 イングランド代表
1986年の準々決勝は、ディエゴ・マラドーナが伝説を創り上げたフットボール史に残る一戦。

アルゼンチン代表(ホーム扱い / アウェイモデル着用)※写真は復刻版
「神の手」ゴールのわずか数分後、今度は自陣から5人を置き去りにする「世紀のゴール」。ホルヘ・バルダーノやホルヘ・ブルチャガら実力者が脇を固めたアルゼンチンは、この大会で2度目の世界王者に輝きました。

このとき着用したユニフォームは、メキシコの酷暑対策のため急遽現地でメッシュ素材のシャツを調達し、エンブレムを手縫いしたと言われています。マラドーナが実際に着用したこのシャツはのちにオークションで約12億円という史上最高額クラスで落札され、現代最高のヴィンテージアイテムとなりました。

イングランド代表(アウェイ扱い / ホームモデル着用)※写真は復刻版
相手が青を選んだため、強い日差しに映える伝統の白シャツを着用。大会得点王に輝いたゲーリー・リネカーを擁しながらも、この伝説の一戦で涙を呑みベスト8でメキシコを去ることになりました。

1998年 フランスW杯 ラウンド16:90年代らしいシルエット、10人の獅子とひとりの“愚か者”

試合結果:アルゼンチン代表 2 – 2 イングランド代表(PK戦 4-3)
マイケル・オーウェンの独走ゴールやデビッド・ベッカムの退場など、90年代の熱狂が詰まった死闘。

アルゼンチン代表(ホーム扱い / アウェイモデル着用)
ホーム扱いながらアウェイモデルを選択。adidas製の重厚感あるシルエットが90年代ヴィンテージ特有の魅力を放ちます。ガブリエル・バティストゥータやアリエル・オルテガら個性的なタレントが躍動しましたが、続く準々決勝でオランダ代表に劇的な敗戦を喫しました。

イングランド代表(アウェイ扱い / ホームモデル着用)若きデビッド・ベッカムがディエゴ・シメオネの挑発に乗り、報復の軽い足蹴りで一発退場。数的不利に陥りながらPK戦まで死闘を演じたチームメイトと、戦犯扱いされたベッカム氏の残酷な対比は、当時のイギリスメディアに「10人の勇敢な獅子と、1人の愚かな若者」とセンセーショナルに書き立てられました。

大会の名前を刻んだ刺繍がよりコレクター心をくすぐるディテールでした。

2002年 日韓W杯 グループステージ:雪辱を果たした真紅のシャツ
試合結果:アルゼンチン代表 0 – 1 イングランド代表
ベッカムが自ら得たPKを決め、4年前の雪辱を果たした劇的なリベンジ。

アルゼンチン代表(ホーム扱い / ホームモデル着用)「エル・ロコ(狂人)」の異名を持つマルセロ・ビエルサ監督のもと、ガブリエル・バティストゥータ、フアン・セバスティアン・ベロン、ディエゴ・シメオネら「史上最強」の呼び声も高い陣容で臨んだ一戦。
1998年フランスW杯後に一時Reebokへと切り替えた後、adidasとの長期パートナーシップを復活させ、日韓W杯では復帰後2作目のホームモデルを着用しました。当時のオーセンティックモデルにはadidas「デュアルレイヤー(2重素材)」技術を採用した美しいVネックのシャツでしたが、グループステージ敗退という悲劇に終わりました。

イングランド代表(アウェイ扱い / アウェイモデル着用)
1998年の退場事件から4年。今度はキャプテンマークを巻いてピッチに立ったデビッド・ベッカム。マイケル・オーウェンがマウリシオ・ポチェッティーノに倒されて得たPKをベッカムがド真ん中に蹴り込んでネットを揺らし、4年越しの雪辱を果たしました。ビクトリア・ベッカム夫人やポップカルチャーとの結びつきもあって社会現象となった真紅のアウェイモデルを纏い、リオ・ファーディナンド氏ら「黄金世代」がベスト8へ進出。準々決勝でのちの優勝国ブラジル代表に惜敗し大会を終えました。

デザイン統一のパッチや刺繍が導入された大会でもありました。

【60年、40年、24年の時を超え、北中米の地で再び】
シャツの生地感やロゴの仕様など、ヴィンテージ特有のディテールに注目すると、歴史の深みがさらに増してきます。

そして今回のW杯、すべての因縁の始まりである1966年イングランドW杯からちょうど60年。1986年メキシコW杯でのマラドーナの伝説から40年、2002年日韓W杯の激闘から24年という幾重もの節目が重なる大会で、W杯本大会では通算6度目の対戦が決定しました。北中米W杯の準決勝という最高の舞台に、世界中が熱視線を送っています。

今回は一体どんなドラマが生まれ、どんなユニフォームの記憶が刻まれるのでしょうか。注目のキックオフが、待ちきれません!。

ヴィンス君
ヴィンス君
W杯におけるユニフォームの組み合わせは、両チームの意向だけでなくFIFAの厳格な基準によって決定されます。

特に過去の大会では、世界中で普及していた「白黒テレビ」での中継でも両チームを明確に見分けられるよう、シャツだけでなくショーツやソックスに至るまで「明(ライト)」と「暗(ダーク)」の濃淡のコントラストをはっきり分けることが徹底されていました。

こうした背景が、時に予想外のモデルの組み合わせや「急造ユニフォーム」のドラマを生み出してきたのです。